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第51巻第6号 (通巻535号 )
日生研たより 2005年(平成17年) 11月号

自然界でのウイルスの生態/山内 一也
ブタの肺/動物衛生研究所・つくば出題/第45回獣医病理学研修会標本No.880
オセロットの胃/動物衛生研究所・北海道 北海道石狩家畜保健衛生所出題/第45回獣医病理学研修会標本No.882

ヤギの大脳・頭蓋部腫瘤/(財)日本生物科学研究所出題/第45回獣医病理学研修会標本No.887

レビュー/わが国における重要な馬のウイルス感染症と防疫 1/今川 浩
レビュー/イヌ免疫グロブリン/岩田 晃
学会発表演題/第52回日本実験動物学会総会/第32回日本トキシコロジー学会学術年会/日本畜産学会第105回大会/環境ホルモン学会第8回研究発表会/第140回日本獣医学会学術集会


 

 

 


自然界でのウイルスの生態
山内 一也

 生物界は真性細菌,古細菌,真核生物の3つに大別されるが,最近,それらに寄生するウイルスの間に共通性がみつかってきたことから,ウイルスはこれら3つの生物界が分かれた30億年前には地球上に出現したものと推測されるようになった。細胞の代謝系やエネルギー産生系に依存しなければ子孫を作り出せないウイルスは,その存続の場となる自然宿主と30億年にわたって,さまざまな戦略で共生してきたことになる。わずか20万年前に出現した現生人類(ホモ・サピエンス)は,ウイルスにとってはその存続の場として必要なものではなく,たまたま遭遇した動物の一種にすぎなかった。
 最近,トリインフルエンザウイルス,SARSコロナウイルスなどのエマージングウイルスのように,人に致死的感染を起こす野生動物由来のウイルスが続々と見いだされている。これは現代社会の発展に伴い,野生動物と人間の距離がせばまったために偶然起きてきた結果にすぎない。それでは,野生動物にどれくらいのウイルスが存在しているのであろうか。たまたま,人が感染した場合,その宿主である野生動物についての関心が高まると,いくつもの新しいウイルスが見つかってくる。その典型的な例は,コウモリのウイルスである。オーストラリアで馬と人に致死的感染を起こしたヘンドラウイルスおよびマレーシアで豚と人に致死的感染を起こしたニパウイルスの自然宿主がオオコウモリであったことがきっかけになって,オオコウモリで新たに,リッサウイルス,メナングルウイルス,チョウマンウイルスが見つかった。SARSコロナウイルスの自然宿主探しでも,コウモリに焦点を合わせた研究の結果,最近になってキクガシラコウモリが自然宿主であることが2つのグループから報告された。膨大な種類の野生動物のそれぞれにウイルスは寄生しているはずであるが,その生態はまったく分かっていない。
 ところで,ウイルスは陸地の生物にだけ寄生しているのではない。海洋生物には陸上を上回る膨大なウイルスが存在していることが,1980年代終わりから指摘されるようになった。米国メリーランド州では海水中のウイルスの量が夏には1mlあたり10億個にもなり,藻類や細菌の数を上回ることが観察されている。ノルウェイのフィヨルドの海水でも同様の観察が行われ,ウイルスが遺伝材料を藻類に運び込んで藻類の適応変異を助けているという考えが示された。
 最近,世界の海に含まれるウイルスについて興味ある試算が発表された(Nature 437,356,2005)。それによると,深海では3×106/ml,沿岸の水には108/mlのウイルスが含まれると推定されることから,地球上の海洋の容量を1.3×1021l,それに含まれるウイルスの平均数を3×109/lと仮定すると,海洋全体には4×1030 のウイルスが含まれることになる。海のウイルスに含まれる炭素を約0.2フェトグラム,長さを約100ナノメーターと仮定すると,海のウイルス全体に含まれる炭素の量は2億トン,シロナガスクジラ7500万頭に相当する膨大なものになる。仮にウイルスをつなげると,全体の長さは1000万年光年になるという。ウイルスは,海の中でもっとも遺伝的多様性を持った生命体として,海洋生態系に大きな影響を及ぼしていることが想像できる。
 これまで,我々はウイルスを単に感染症の原因としてとらえてきたが,地球上でもっとも長い歴史を持った生命体という視点にたって,ウイルスの存在意義をあらためて考えるべきであろう。
(主任研究員)

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学会発表演題
第52回 日本実験動物学会総会
期日:2005年5月18日〜20日 開催地:東京都江戸川区(タワーホール船堀)
発表演題

キメラを介した筋ジストロフィー症ニワトリ再生の試み
〇藤原 哲1,2),水谷 誠1),矢澤 肇1),布谷鉄夫1),上田 進1),小野珠乙2),鏡味 裕2)1)日生研,2)信州大)

 

第32回 日本トキシコロジー学会学術年会
期日:2005年6月29日〜7月1日 開催地:東京都江戸川区(タワーホール船堀)
発表演題
キニジンの血漿中での動態
〇北条隆男,斎藤敏樹(日生研)
 

日本畜産学会 第105回大会
期日:2005年9月9日〜10日 開催地:北海道札幌市(札幌コンベンションセンター)
発表演題
発生工学的手法を用いた筋ジストロフィー症ニワトリの再生
〇藤原 哲1,2),小野珠乙2),鏡味 裕2)1)日生研,2)信州大)
 

環境ホルモン学会 第8回研究発表会
期日:2005年9月27日〜29日 開催地:東京都墨田区(江戸東京博物館)
発表演題
ニホンウズラの生殖腺におけるestrogen receptor α,β,cytochrome P450 17αhydroxylase,cytochrome P450 aromatase,anti-Mu¨llerian hormoneおよびandorogen receptor mRNA発現の検索
〇中村圭吾1),渋谷一元1),齋藤 昇2),島田清司2),平井卓哉1),布谷鉄夫1)1)日生研,2)名古屋大)
 

第140回 日本獣医学会学術集会
期日:2005年9月29日〜10月2日 開催地:鹿児島県鹿児島市(鹿児島市かごしま県民交流センター)
発表演題
豚丹毒菌各血清型及びその他のエリシペロトリックス属菌由来,表層防御抗原の配列比較
〇ToHo,長井伸也(日生研)

その他のエリシペロトリックス属菌由来表層防御抗原(spaC)の免疫原性
〇ToHo,染野修一,長井伸也(日生研)

Eimeria brunettiの浸潤状況調査と病原性試験
〇川原史也,大永博資,長井伸也(日生研)

分子量の異なるIA-2βの切断部位および細胞内局在の解析
〇竹山夏実1,2),川上登美子1),佐伯圭一1),松本芳嗣1),小野寺節1)1)東大・応用免疫,2)日生研)
 


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日生研たより 昭和30年9月1日創刊(隔月1回発行)
(通巻535号) 平成17年10月25日印刷 平成17年11月1日発行(第51巻第6号)
発行所 財団法人 日本生物科学研究所
〒198-0024 東京都青梅市新町9丁目2221番地の1
TEL 0428(33)1056(企画・学術部) FAX 0428(31)6166
発行人 井土俊郎
編集室 委 員/山元 哲(委員長),北條隆男,黒田 丹
事 務/企画・学術部
印刷所 株式会社 精興社
(無断転載を禁ず)


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